第96回全国高校野球選手権神奈川大会 決勝戦

横浜勢も川崎勢も絡まない、いわゆる西神奈川の高校同士による決勝戦は(第80回西神奈川大会を除くと)実に38年ぶり。そのときのカードも東海大相模vs向上で、結果は19-0で相模が圧勝したものの、それは所詮遠い昔の話。今の相模にとって、向上は今年の春季大会で延長の末に敗北した相手です。門馬監督は偵察要員も起用し、万全の体制で挑んできました。
先発は相模が2年生吉田、向上が左腕の鈴木翔。奇襲にも思える鈴木翔の先発に対し、相模は初回1死から杉崎がライトにソロを放ちいきなり先制。しかし鈴木翔も立ち直り、2・3回とヒットを許すも無失点に抑えます。
一方の吉田は初回、1死から鈴木陵を歩かせると、盗塁を刺そうとした送球がセンターに抜け1死3塁と向上同点のチャンス。しかし菅野を三振、安達四球も田村を三振に打ち取って無失点で切り抜けると、2・3回は圧巻の6者連続奪三振!ストレートは 昨夏 観たときほどの衝撃は感じなかったものの、キレキレの縦スラを有効に使い、最初の3イニングのアウトをすべて三振で奪います。
相模打線を序盤最少失点に抑えていた鈴木翔でしたが、4回先頭の豊田がショート内野安打、平山ライト前と盗塁で無死2・3塁のピンチ。南谷は一ゴロ、ホームで刺して一息つくも、続く長倉にレフト前に運ばれ相模2点目。ここで鈴木翔はレフトに回り、前日完投のエース高橋がマウンドに上ります。高橋は後続を断つと、5回は杉崎をセンター前で出すもキャッチャー安達の好送球で盗塁刺。さすがエースという投球で、相模の強力打線を抑え込みます。
一方向上打線は4回先頭の菅野がチーム初ヒットとなるセンター前で出塁。この走者をホームに返したいところでしたが、三振ゲッツーで無得点…。5回も三者凡退に終わり、吉田の前に攻略の糸口を見出すことができません。
それでも5回を終わって2点差、まだまだ向上にも十分チャンスが残されている雰囲気でしたが、6回ついに相模の打線が目覚めます。連打と盗塁で1死2・3塁とすると、長倉がセンター前に弾き返す2点タイムリー。小酒井もライト前で続き、宮地は10球粘った末に遊ゴロも併殺は回避、盗塁して2死2・3塁のチャンスに、吉田が自援護となるセンター前2点タイムリー。あまりにも重い4点が入ってしまいました。7回は2死走者無しから平山がレフト前で出塁すると、南谷がライトに2ラン。8回は先頭の小酒井にセンター前を許すと、自身のバント処理のミスもあり1死1・2塁となった時点でついに降板。決勝進出の原動力となったエースも力を出しきり、大きな拍手の中ベンチに下がりました。
3番手は左腕の宮崎が登板も、楠にライト線への2点タイムリーを浴び点差は10点に。さらに杉崎には右中間の最深部に飛び込む2ラン、さらに豊田レフト前と相模打線の猛攻をまともに受け、1アウトも奪えず降板…。代わった4番手日名子が後続を断ち、9回も続投。暴投で1点を失ったものの無安打に抑え、相模の毎回安打と20安打を阻止する意地を見せます。
一方吉田の前に三振を量産し続けていた向上打線は8回先頭の鈴木翔がライトオーバーの2ベースで出塁。何とかホームに還したいところでしたが、後続が三邪飛→左飛→四球→三振で3塁にも進ませられず。8回まで2安打無得点、18個もの三振を奪われ手も足も出ません。
最終回も続投の吉田に対し、先頭の鈴木陵がチーム3本目となるセンター前で出塁。菅野は三振に倒れるも、続く安達の打席で果敢に二盗を決め、さらに安達が三振に倒れた球で三盗!もし失敗していればいつぞやの仁志呼ばわりされ、今後プレイバックで晒され続けることになっていただろうプレーも見事決め、2死3塁と得点のチャンス。
しかしここで大会タイとなる20個目の三振を奪った吉田が、あと1人の場面で降板。記録より形をということなのか、エースナンバーを背負った青島に最後を託します。その青島が代打福山を三振に打ち取りゲームセット!打っては19安打13得点、投げては21奪三振完封リレーという圧勝で、東海大相模が4年ぶりの優勝を果たしました。

決勝が2桁得点&完封となったのは2004横浜-神奈川工以来10年ぶり、13点差がついたのは1999桐蔭-桜丘以来15年ぶり。最終的には一方的な展開となってしまいましたが、決して向上が自滅したわけではなく、現に向上の与えた四死球はなんとゼロ。向上は自分たちの力を出しきり、相模がそれにしっかりと応えたことで、このような結果になったのだと思います。大会序盤から薄氷を踏むような勝利の連続でしたが、それでも決勝まで残ったのはさすが春関準優勝校。見事な戦いぶりでした。
一方の相模、投手は吉田小笠原、打線も杉崎豊田長倉らが2年生という状況に、神奈川では10年以上出ていない夏の連覇にも今から期待がかかります(注: これと同じ文言を 昨年一昨年 と書いています)。しかしその前にまず甲子園。140キロカルテットに大会最多タイ記録のホームラン11本を放った打線という、これ以上なく充実した戦力を擁しており、総監督にも報いるべく4年前を超える結果を期待したいですね!