第5回「1994年秋季リーグ戦 東大-立大」

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そして迎えた秋のリーグ戦、東大は早速結果を出します。開幕の明大戦は連敗するものの続く早大1回戦、「平成以降では3人しかいない通算30勝投手の1人」織田淳哉に5回まで無得点に抑えられるものの、6回に怒涛の6連打で一挙5点を先制、9回にも4点を追加し、投げては高橋完封で9-0の快勝。春の結果がフロックでないことを見せ付けます。この試合は織田目当ての巨人のスカウトも観戦に来ており、KO劇を目の当たりにしてただ絶句するばかりだったと言われています。
続く慶大2回戦では初回に4点を奪うも先発の尾崎が逆転を許し、逆に2点を追う展開に。以前ならばこのままジリ貧の展開になっていたところでしょうが、打線が中盤になって奮起します。6回に3連打で1点差に詰め寄った後、森原の2点タイムリーで逆転に成功。8回には石田のタイムリーで追加点を挙げ、投げては7回からリリーフした高橋が後続を断ち8-6での勝利。春に引き続き早慶両校から勝ち星を挙げます。
そして最後のカードはまたも東立直接対決。ここまで東大は春と同じく2勝8敗の勝ち点0、一方の立教は投手陣が粘るも援護に恵まれず、2分けのみで勝ち点どころか勝ち星も無し。直接対決で勝ち点を挙げた方が単独5位、落とした方が最下位という、まさに大一番となります。
迎えた第1戦、先発は東大:高橋、立教:川村の両エース。東大は先制された直後に一旦は逆転に成功するも、高妻寛樹のリーグタイ記録となる1試合3本塁打を含む5本のホームランを浴びて3-8で敗戦。最下位脱出に向けて、またも後がなくなります。川村はこれが今季初勝利、通算21勝目。

1994/10/22 立大 - 東大 1回戦
T 003 000 000 3
R 012 111 11X 8
T ●高橋-黒川
R ○川村

続く第2戦、先発は尾崎と木下健之。春に続き勝ち点奪取のための重要な2回戦のマウンドを任された尾崎、前日に猛威を振るった立教打線の打ち気を逸らし、0行進を続けていきます。打線は初回に北村のタイムリーで先制、5回にも連打で3点を加え、尾崎を援護します。尾崎は春のように追い上げられることも無く、3安打10奪三振でリーグ戦初完封勝利。

1994/10/23 東大 - 立大 2回戦
R 000 000 000 0
T 100 030 01X 5
R ●木下-奥平-大浦
T ○尾崎

いよいよ3回戦、先発はもちろん高橋と川村。両校の4年生にとって最後の神宮、この試合の東大の戦いぶりは4年間の思いを余すところ無くぶつけるかのようなものになるのですが、その口火を切ったのは主将の濤岡の鮮やかな先頭打者ホームラン!この回3点を先制、2回には連打に四球・失策も絡んで一挙6点を奪い、試合を決定付けます。高橋は1点を失うも全く動じること無く、結局東大にとっては10年ぶりの2桁得点、戦後2番目の記録となる12点を挙げ、立教を粉砕しました。

1994/10/24 立大 - 東大 3回戦
T 360 000 030 12
R 000 010 000 1
T ○高橋
R ●川村-奥平-木下-大浦-神田-河村

この結果、東大は4勝9敗の勝ち点1で単独5位が決定。試合終了後、濤岡は「大学最後の試合で、最高のゲームが出来た」と、涙を流しながら語ったといいます。一方の立教は1勝10敗で最下位。川村はプロへの道を一度封印し、日本石油に進むことになります。その後のアトランタオリンピック、そして横浜入団後の活躍については、もはやここで語る必要も無いでしょう。
この年からの数年間、東大と立教は熾烈な争いを繰り広げることになります。翌1995年、春のシーズンは主将に就任した間宮が首位打者を獲得する活躍を見せ、立教から勝ち点を奪い5位。続く秋のシーズンは立教が雪辱を果たし最下位脱出。この年限りで大黒柱の高橋は卒業しますが、入れ替わるように遠藤良平が加入。中西正樹とバッテリーを組み、引き続き他校に立ち向かっていくのでした。