第7回「1998年秋季リーグ戦 東大-早大」

東大が立教を退け、現時点では最後となっている5位を確保した1997年の秋季リーグ戦。4年間で18勝・立教から勝ち点を奪うこと実に6度と、勝ちの味を強く知った世代がこのシーズン限りで卒部することで、東大野球部は新たな局面を迎えていました。
その先頭に立ったのが新3年左腕・遠藤良平。1年の秋から先発を経験、そのシーズンで立教から初勝利を挙げると、2年春秋で立教から1勝ずつを挙げ、2年終了時点で既に3勝。この3季連続の勝ち点奪取に多大な貢献を果たしました。そして3年目を迎えるに当たり、「自らが1カードに2勝して勝ち点を獲る」ことを目標として迎えた1998年のリーグ戦、春の開幕戦の相手は早稲田。この試合で後半に打線が爆発し、投げては遠藤が完投で8-2と快勝という最高のスタートを切ったものの、終わってみれば春はこの1勝のみで最下位。目標は達成されず、気持ちを新たにして迎えた秋のリーグ戦でした。
そして秋季、ともに2カードを消化し勝ち点0同士で迎えた東早戦。1回戦の先発は東大が遠藤、早稲田が鎌田祐哉。先手を取ったのは東大でした。4回に1死1・3塁として仲戸川武人の内野安打で先制、さらに押し出しで2点のリード。これ以後は早稲田の投手陣に抑えられていましたが、9回に2死1・3塁から重盗が決まり、貴重な1点を追加します。遠藤は8回まで無失点、最終回に佐藤直人にソロを浴び完封は逃したものの、その1点に止め完投勝利。通算5勝目を挙げます。

1998/10/3 東大 - 早大 1回戦
T 000 200 001 3
W 000 000 001 1
T ○遠藤
W ●鎌田-村上-菊池

続く2回戦、東大の先発は2年生の井上賢一、早稲田の先発は藤井秀悟。井上は高校の先輩である遠藤に続けとばかりに順調な立ち上がりを見せますが、4回に開田成幸に犠飛を打たれ先制を許してしまいます。失点はこの1点に止め味方の反撃を待つも、打線が藤井を攻略できず。最終回に無死3塁の大チャンスを作るも後続が倒れて完封負け、勝ち点の行方は3回戦に持ち越されました。

そして3回戦、東大の先発は遠藤、早稲田の先発は1年生の江尻慎太郎。この試合も投手戦となり、6回に早稲田が犠飛で先制も、8回にようやく東大が1死2・3塁のチャンスを作り、多田克行の内野ゴロの間に同点に。1-1のまま、試合は延長に突入します。
遠藤が依然としてマウンドに登り続ける一方で、江尻は先に降板、2番手のマウンドには菊池仁志が上がっていました。そして10回表、東大が2死1・2塁としたところで菊池が降板、3番手には昨日完封したばかりの藤井が上がります。しかしこの藤井、いきなり牽制悪送球で2塁走者の遠藤を3塁に進めると、続く投球はワンバウンド!捕手が辛うじて体で止め、ボールは数メートル横に転がっただけであったものの、遠藤はボールがリリースされた時点で暴投を予見して勢い良くスタートを切り、その勢いは止まりませんでした。果たしてタッチより先に遠藤がホームを踏み、遂に勝ち越し!動揺した藤井はさらに3連続四球を与え押し出し、貴重な1点が労せずして転がり込んできました。
そしてその裏も遠藤は無失点に抑え、通算6勝目を早稲田からの勝ち点で飾りました。

1998/10/5 東大 - 早大 3回戦
T 000 000 010 2 3
W 000 001 000 0 1
T ○遠藤
W 江尻-●菊池-藤井

早稲田から15年ぶりとなる勝ち点を奪い、目標としていた「自らが1カードに2勝して勝ち点を獲る」も達成。しかしその裏で、遠藤はさらにもう1つの目標を残していたのでした。